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フィリピンと日本の関係は深く、1980年代から就労のために来日するフィリピン人の数が増え始めました。多くは身分系の在留資格を取得しており、日本社会に深く馴染んでいます。さらに近年、技能実習生として来日する人も増えてきました。
この記事では、フィリピン人の性格に根付いている文化や社会通念を解説。また、フィリピン国内でよく見られる仕事観についてもまとめています。ぜひ採用活動やマネジメントにお役立てください。
※WeXpatsは偏見と差別の排除を理念の一つに掲げて活動しています。本稿にも「人種」や「国籍」といった特定の属性に対するイメージを単純化する意図はありません。本稿の内容は、あくまでフィリピンの文化や社会通念を紹介するものであり、個々人の性格は多種多様であるという点を踏まえてご覧ください。
目次
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フィリピンは歴史的背景から日本と非常に繋がりが深い国です。日本が経済発展を遂げた1980年代からは、就労を目的に来日する人が増え始めました。
「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」によると、日本で働くフィリピン人は22万6,846人。この人数は外国人労働者全体の約1割を占めます。「永住者」や「日本人の配偶者」として長く日本で暮らしている人も多く、外国人のなかでも特に身近な存在といえるのではないでしょうか。
フィリピン人についてさらに詳しく知るために、まずはフィリピンとはどのような国なのかを見ていきましょう。
フィリピンの人口は1億903万5,343人(2020年国勢調査)です。今度も増加し続けていくと見られており、将来的には2億人国家になると予想されています。人材市場において、特に注目すべき国といえるでしょう。
若年層が多いのもフィリピンの特徴の一つ。フィリピン人の平均年齢は24才であり、労働人口が豊富で経済成長率が高い「人口ボーナス期」に入っている状態です。
フィリピンの人口ピラミッドは綺麗な三角形をしており、「子どもが多く高齢者が少ない」状態なのがはっきり分かります。すりばち型の日本の人口ピラミッドとの違いは一目瞭然です。
「フィリピン国家統計局(PSA)」によると、2022年のフィリピンの合計特殊出生率は1.9でした。前回調査の2017年の2.7から大幅に減っていますが、新型コロナウイルスの一時的な影響が大きいと考えられています。依然として高い水準であることに変わりはありません。
フィリピンは主にカトリックが信仰されているため、産児制限が推奨されていません。また、家族や親戚と一緒に暮らすことが多く、育児の担い手が豊富なのも子どもが多く生まれる理由とされています。
成長が著しいフィリピン経済には世界中の注目が集まっています。経済成長率はASEANのなかでもトップクラス。先述したように労働力が潤沢で将来性が見込めるほか、政府が外国企業の誘致を進めるべく優遇措置を行っているため、進出先としても魅力的です。
また、外国企業のコールセンター業務受託や海外就労者からの送金、オンラインカジノ産業が経済成長を支えています。
フィリピンでは、フィリピン語(フィリピノ語)とともに英語を公用語に定めています。学校教育は英語で行われるため、ほとんどの国民が流暢に話すことが可能です。
第二言語として学んでいることから、ネイティブスピーカーよりも発音の繋がりやスラングが少なく、日本人にとっては聞き取りやすい英語を話す傾向があるといわれています。
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関連記事:「【2024年6月最新】特定技能とは?制度や採用方法をわかりやすく解説」
参照元
厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」
外務省「フィリピン共和国」
Philippine Statistics Authority 「Health」
フィリピン人を雇用して一緒に働くうえで、文化や社会通念からくる性格の特徴を知っておくとより効果的なマネジメントが可能になります。フィリピン人の性格をひとくくりにはできませんが、よく見られる傾向を知っておくことは、コミュニケーションを円滑に進めるための助けになるでしょう。
情勢不安が続いていたフィリピンは、人々が互いに支え合いながら発展してきました。さらに、農林水産業が盛んなため、より大勢の人々が協力して働く必要があったのです。そのような歴史的背景が、人との繋がりを大切にするという価値観に繋がっています。
また、スペイン領の時代が300年以上あったフィリピンは、いわゆるラテン系の気質が残っている国です。ラテン系に分類される国々では、辛いときにも明るく前向きに振る舞うことを良しとする価値観があります。この特徴がフィリピン人の国民性に影響を与えているのでしょう。
先述のとおり、フィリピン人は家族や周囲のコミュニティと支え合って生活してきました。また、フィリピン人の多くが信仰するカトリックでは「人を赦(ゆる)し愛することで自分も神から愛される」という「隣人愛」を説いています。
これらの背景から、争いで雰囲気を悪くするよりも、家族や仲間と仲良く過ごすことがより重要と考えている人が多いといえるでしょう。
フィリピンはASEAN唯一のキリスト教国家であり、国民の83%はカトリック教徒です。そのため、文化や習慣、価値観にもカトリックの教えが深く根付いています。
たとえば、良い行い(寄付や巡礼、ボランティア)をすれば自分も救われるというのがカトリックの教えです。フィリピンの人が積極的に困っている人を助け気遣うのは、これらの信仰も影響しているといえるでしょう。
フィリピン人は、家族や親戚皆で支え合いながら仕事や家事、子育てを行ってきました。さらに家族の人数が多いこともあり、親や兄弟、親戚との繋がりをとても大切にしています。
たとえば、子どもが成人してからも両親や祖父母、兄弟と同じ家もしくは同じ敷地に住むことは決して珍しくありません。独立しても、いわゆるスープが冷めない距離に住まいを構えるケースが多いようです。
海外で働くフィリピン人でも、家族を大切に思う気持ちは変わりません。給料を仕送りしたり頻繫に連絡したりして、常に気にかけています。
フィリピン人のゆったりとした時間感覚を表す「フィリピンタイム」という言葉があります。人との繋がりを大切にするフィリピン人からすると、厳密に時間を守ることよりも人間関係を円滑に進めるほうが優先順位が高いようです。
たとえば、友人と話が楽しく盛り上がっているのなら、次の待ち合わせに遅れそうでも途中で切り上げずに満足いくまで話し続けることも。
また、マニラをはじめとした都市部では交通渋滞が深刻です。予定どおりに出発しても遅れてしまうことが多々あるので、ある程度の遅れは「仕方ない」と考えられています。
参照元
外務省「フィリピン共和国」
ここまでは、フィリピン国内の状況やフィリピン人の国民性について説明しました。これらを踏まえたうえで、業務に直結する仕事観について見ていきましょう。
フィリピン人にとって海外で働くことはとても身近です。人口に対して国内産業が少ないこともあって、労働人口の約1割は海外で働いており、フィリピン国内の経済は海外就労者からの外貨送金によって発展したともいわれています。
フィリピン人の多くは英語を話せるので、海外で働くうえでコミュニケーション面の心配がほとんどありません。また、政府(POEA)が海外就労を積極的にサポートしているため、早い段階で諸外国で働きにいくことを想定して準備している人が多くいます。
たとえば、一度国内の企業に就職して必要な技術や語学力を身に付けつつ、海外企業への転職を待つ人も。海外で働くことが身近な選択肢となっているフィリピン人は、文化や考え方の違いにも比較的適応しやすいといえるでしょう。
海外就労先としてはアメリカや中東、カナダが人気です。日本も、距離の近さや歴史的な関係の深さを理由に就労先としてよく選ばれています。
「家族の繋がりが深い」の項目でも説明したとおり、フィリピン人には家族を大切するという価値観が深く根付いています。そのため、家族が幸せに暮らせるよう一生懸命働いてお金を稼ぎたいと考えている人が多くいるのです。
特に目立つのが女性の存在。フィリピンはアジアのなかでも女性の社会進出が特に進んでいる国だといわれています。女性管理職や専門職の比率はアジアトップクラスで、過去にはグロリア・アロヨ氏やコラソン・アキノ氏など世界的に影響力のある女性大統領も生まれました。この2人の女性リーダーは、女性の社会進出を後押しするさまざまな制度を整えたことで知られています。
フィリピンでは古くから「女性も外に出て働く」という価値観が根付いており、育児や家事は家族や近所の人と助け合って行われてきました。家庭内での役割の性別差もあまりなく、できる人が家庭を守り、働ける人が働きます。
フィリピンの職場は、日本ほどオンとオフの切り替えがはっきりしていないケースが多いようです。たとえば、暇になったら業務中であってもおしゃべりやYouTube鑑賞をして過ごすことがあります。また、音楽好きな人が多く、イヤフォンをして働いている人も珍しくありません。
フィリピンの職場ではこれらの習慣は問題視されないので、日本の職場でも業務中に関係ない行動をしてしまう可能性があります。このような状況を知ったうえで、日本のマナーとしてオンとオフの切り替えが重要であることを理解してもらい、そのために必要な行動を教えていきましょう。
日本ほど、綿密に計画を立ててその通りに実行することは重要視されていない傾向にあります。結果がうまくいけば良いという考えがあり、柔軟に対応できるというメリットがある一方で、手続きや締め切りに間に合わないリスクもあるでしょう。
「時間はあまり気にしない」の項目でも説明したとおり、フィリピン人は時間に対して楽観的な考えを持っています。余裕を持って間に合わせることでどんなメリットがあるかを一緒に考えつつ、事前に計画を立てる必要性を知ってもらうところから始めましょう。
フィリピン企業は年功序列ではないので、1つの会社に長く勤めるメリットは日本ほどありません。また、フィリピンの人材市場では転職がネガティブ要素として考えられていないため、より良い条件があれば頻繁に職場を変えるのは当たり前です。
長く働いてもらうためには、フィリピン人が最も大切にしている家族を尊重する姿勢を見せるのが効果的でしょう。家族の事情による欠勤や早退の申し出は、できる限り柔軟に対応すると信頼を得られるきっかけになります。また、より良い給料を求めて転職する人が多いので、出した成果を正当に評価するのも大切です。
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フィリピン人に気持ちよく働いてもらうために「行った方がいいこと」「行ってはいけないNG行動」を紹介します。文化の違いによるギャップを取り払うために、以下の点を意識してみましょう。
フィリピンの労働法は労働者を手厚く保護する内容です。例えば、フィリピン国外の企業がフィリピン人を雇用する際には、渡航費や研修費などの費用を本人から徴収してはいけないことになっています。この点は、アジアの多くの国とは異なります。無理な業務の進め方は、母国との違いも相まって不信感を与えることになるでしょう。サービス残業や本来の休日に出勤を強要することなどはもってのほかです。
フィリピン人を人前で叱責することはタブーです。もちろん誰であっても人前で怒られて良い気持ちはしませんが、よりナーバスに受け止められる可能性があります。軽い注意であっても「侮辱された」「人前で恥をかかされた」と感じる人が多いようです。
人間関係を大切にするフィリピンでは、怒るよりも褒めて伸ばす文化のほうが根付いています。注意の方法を間違うと、帰属意識の低下や早期離職に繋がる恐れがあるでしょう。指摘したいことがある場合は、ほかの人がいない場所で声の大きさやトーン、表情にも気を付けて行う必要があります。
フランクな雰囲気の職場作りを意識することで、フィリピン人も気持ちよく意欲的に働けるでしょう。
フィリピンの職場は風通しがよく和気あいあいとした雰囲気のところが多いため、淡々と仕事をこなす職場はフィリピン人からすると居心地が悪く感じられます。マネジメントを成功させるうえではある程度の距離感や線引きは重要です。しかし、悩みや困りごとをすぐにすくい上げられるような環境づくりは必須といえます。
職場の親睦を深めるために、レクリエーションの実施も効果的です。フィリピンの職場では、クリスマスパーティーやカンパニーアウティング(社員旅行)が盛んに行われています。
キリスト教国家であるフィリピンでは、クリスマスパーティーが1年のうちで最も重要な行事です。企業のクリスマスパーティーのクオリティは社員の離職率に影響するといわれているほどで、予算を立て、社員にクリスマスプレゼントを贈ったりごちそうを振る舞ったりします。
ここまでは難しいとしても、職場全体で楽しいことを共有し親睦を深めることは、企業への帰属意識を高めることに繋がるでしょう。
関連記事:「外国人人材のマネジメントについて解説!起こりやすい問題や注意点とは?」
フィリピン人を日本で雇用するためには、MWO(移住労働者事務所/旧:POLO)に申請を行う必要があります。
出稼ぎを行う人が多いフィリピンには、海外で働くフィリピン人の権利保護を目的とする政府組織が存在し、その事務所がMWOです。
日本には東京と大阪の二カ所にMWOがあり、フィリピン人を雇用する際には、多数の英文書類を作成して提出することになります。手続きの流れは厚生労働省の情報をご確認ください。
コミュニケーション能力が高く人との関わりを大切にしているフィリピン人を雇用すると、職場の雰囲気が明るくなるメリットがあります。持ち前のホスピタリティ精神と明るさから、サービス業で才能を発揮する人も多いようです。
フィリピン人を雇用したら、タイムマネジメントのテクニックを丁寧に教えましょう。遅刻や納期遅れの原因は、根本に「少々遅れても問題ない」という価値観があるためです。なぜ余裕をもって期日に間に合わせる必要があるのかを理解してもらい、日本の時間感覚に合った働き方も習得してもらいましょう。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net